SATORU  TAKEUCHI 竹内 啓

場との交感 

 作品はすべて完成するまで屋外で制作しています。ここ数年、許可をいただいて遺跡で制作することも増えました。

まず和紙や綿布、絹を地面に敷きます。その土地の光、空の色、吹いている風、山、木、雲の流れなどを確かめるように、あるいは自分を空間に溶かし込むように溶いた絵の具を即興的に乗せていきます。じっと見つめること、絵の具を溶くこと、刷毛や筆を動かすことすべてが音楽を奏でるような一連の流れになっていきます。

 もうできることはないと思えたとき、静かに画面に手を加えるのを終えます。作品タイトルはこの日時、場所名になっています。そして現場で一晩から数日、自然の力を借りて絵の具が乾くのを待ちます。画面上でゆっくりと水分が蒸発して空に帰っていく間に絵の具の粒子は画面の(=その土地の)起伏に沿って微小な川を作って流れたり、湖に流れ込んだような痕跡を残したり、時には雨に当たりながらも熟成され完成します。作品はその場の自然とのやりとりの記録にもなっています。